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竹迫 順平
竹迫 順平さん
神奈川県 カレー屋
鎌倉でカレー屋さんを営む竹迫さん。商品づくりからお店の経営まで一人で行っています。パキスタンのパンジャブ地方で伝わるそのカレーは、水を一切使わずに、鶏肉と野菜と塩とスパイスを入れて2泊3日煮込んで完成させます。特別な日に出される郷土料理なので現地でもなかなか食べられないものです。今では世界各国から人が訪れるという"極楽カリー"。今回のインタビューでは自分でお店を開いた経緯から、経営する大変さや商品に対する思いを聞かせて頂きました。

モノづくりには作り手の命が込められているので、
商品価値の理解が深まっていくと嬉しいです。

カレー屋さんを始めるきっかけは何だったんですか?

私のカレーには師匠が居ます。奥さんがカレー好きで、一緒にその師匠が経営するカレー屋さんに通うようになったのがきっかけだったんですけど、頻繁に行っているうちに自分も手伝うようになりました。今こうやって自分でお店を開いているのは、師匠に「もう自分でやりなさい。」って言われて、お店を出る事になったからです。

それからすぐ鎌倉ではじめたんですか?

いえ、すぐは始められませんでした。自分でお店を開くなんて考えた事も無かったし、ずっと師匠のお店で働いていくと思っていたのでとても慌てました。急にその職場を離れることになって、明日から仕事が無い状況だったので、必死になって物件探しを始めて、2ヶ月間毎日色々な街を歩きまわっていたんですけど、なかなか良い物件に出会えませんでした。もう諦めて普通のサラリーマンとして就職活動しようと思っていた時に、知り合いに鎌倉の不動産屋さんを紹介してもらったんです。元々、鎌倉は物件が高いイメージがあったので、候補に入って無かったんですけど、不動産屋さんにもうすぐ空き家になるこの物件を聞いて、ここでお店を開くことにしました。

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悩んでいた時にちょうどこの物件が見つかったんですね。ここは元々どんな所だったんですか?

元々は和食系の居酒屋さんだったようです。それを改装して、今の状態にしました。店内や、外に描いてある絵は全部自分で描いています。全部自分で作ったので少し時間はかかりましたが、物件の契約から一ヶ月くらいしてだんだん準備が整ってきて、カレー屋をオープン出来ました。

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極楽カリーさんのカレーは、パキスタンカレーですよね?

私が作っているカレーは、パキスタンのパンジャブという地方で伝わるカレーです。水を一切使わずに約20種類のスパイスと塩と野菜と鶏肉を2泊3日煮込んで作っています。それくらい煮込むとお肉もホロホロになって、とても柔らかくなるんです。最近は、ヨーグルトも販売するようになりました。このカレーは、現地では結婚式とかお祝いの日に出てくるもので、特別な時に作られるものなんです。日本でいうと、お赤飯とかに似た役割を持つ食べ物なんじゃないかと思います。

骨まで柔らかくなっててとっても美味しかったです!特別な日に食べられるものだったんですね。

ありがとうございます。このカレーは現地でもなかなか食べられません。私がパキスタンに行っても食べられませんでした。単純に作るのに時間が掛かり過ぎるので、レストランで出すのはちょっと難しいんだと思います。

2泊3日かかっているんですもんね。

はい。自分でお店を初めてみると、その大変さがとても良く分かりました。私は一日30食限定でカレーを販売しているんですけど、一人でやっているのでそれが限界なんです。一日で作れる量が決まっているから、一生で作れるカレーの量や売上が計算出来ます。2泊3日の命を削って作ったと言うと少し大げさですが、私だけではなく、お店をやっている人やモノづくりをしている人は、自分の寿命を商品に変換しているんです。そういった意味での、商品の価値(物=寿命)の理解が深まって伝わっていくと良いなと思っています。

食べ物の力は凄いです。
このカレーは人を笑顔に出来ます。

どんな方がお店に来てくれますか?

外見が奇抜で、鎌倉っぽくない店なので開店当時は人が入らなかったんですけど、最近はありがたいことに少しづつお客さんが増えてきました。鎌倉に住む人は、「ずっと気になってたけどなかなか入れなくて、勇気を出してきました!」と言ってくれます(笑)。 あとは外国人のお客さんがよくいらっしゃいます。

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外国人のお客さんが多いんですね。中にはパキスタン人の方も居ますか?

はい、たまにいらっしゃいます。パキスタン人のお客さんは、懐かしい味だと言ってくれます。鎌倉という立地もあって、本当に色んな国の方々が来てくれるんです。店内のゲストブックには、それぞれの国の言葉で自由にメッセージを書いて頂いているので、今まで計43カ国からお客さんがお見えになっている事が分かりました。沢山の国の方々に私のカレーを食べて頂けていて、とても嬉しいです。

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43カ国からお客さんが来ているんですか!

日本に来て、食べるものに困る外国の方が沢山いるんです。宗教上の問題で食べられない物がある方は、泊まっているホテルの料理もなかなか食べられません。アメリカからいらっしゃった女性のお客さんで、小麦のアレルギーを持っている方もいました

外国の方だからこその、食べ物に対する事情もあるんですね。

はい。「食べられるモノがあった!」という感じでうちに来てくれる外国のお客さんは意外と多いんです。小麦粉が食べられないと、日本で相当苦労しますよね。醤油も味噌も食べられないので、刺し身は塩をかけて食べたと言っていたのですが、うちの料理は小麦を一切使っていないので、普通に食べることが出来ました。凄く喜んで笑顔になってくれたんです。家族の中の一人だけが、そういったアレルギーを持っていると本当に大変ですよね。そう考えると、家族皆で一緒に同じものを食べられることは、実はとても幸せなことなんだと実感します。

当たり前の事のようだけど、食べたいものを食べられる事は凄く幸せなことなんですね。

以前、癌で食べたいものが食べられなくなってしまった方もいました。近くに住んでいたミュージシャンで、もう亡くなってしまった方なんですけど、亡くなる2ヶ月前にカレーを食べに来てくれたんです。スパイスが食欲を刺激して、完食してくれました。「ここのは食べれたよ!」って喜んでくれたのを見て、お店をやってて良かったと心から思いました。

それはとても嬉しい事ですね。お店を開いたからこそ感じれた事なんだと思います。今後はどんなお店にしていきたいですか?

人は食べ物で笑顔になるんです。国も言葉も文化も超えて人が笑顔になることってあまり無いんじゃないでしょうか。このカレーは人を笑顔に出来ます。うちのお店に来て、ハッピーになってくれる人を沢山見ることができました。今後もこのカレーを世界中の人に食べて欲しいけど、正直この先のことは分かりません。一日一日しっかり生きて、お客さんがハッピーになれるカレーを作り続けられれば良いなと思っています。

竹迫 順平
竹迫 順平

横浜のカレー屋で修行をしたあと、鎌倉市由比ガ浜で極楽カリーを開店。2泊3日煮込み、沢山のスパイスを使ったパキスタンカレーを1日30食限定で販売している。

http://gokurakucurry.com/

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