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小川 大介

舞人

伝統芸能「鬼剣舞」を踊り、世の中に伝える活動をされている小川さん。昨年から二子流東京鬼剣舞の初代リーダー「一剣舞」に就任し、活躍し続けている小川さんに、鬼剣舞を踴り始めたきっかけから、これからのことについて伺ってきました。

鬼剣舞といってもモチーフは鬼ではなく、仏です。

「鬼剣舞」初めて聞いたのですが、どんな踊りなんですか?

岩手県北上市の和賀地方という内陸の地方に伝わる踊りです。山伏が念仏を唱えながら踊っていたのが元になったという説や、将軍が合戦の前に踊らせていたという説などがあり起源はハッキリわかっていませんが、元々は五穀豊穣や悪霊退散を祈る踊りだったようです。今では結婚式のお祝いやお祭りといった、お祝いごとで踊られるのがほとんどです。

悪霊退散ですか!だから鬼をモチーフにしているんですか?

いえ、実は鬼ではなく、仏の化身なんです。よく見ると面にもツノが生えていません。基本的には赤、白、青、黒の4つの面があってそれぞれ方角と四季を表しています。中でも白い面は特別で、他の皆を率いるリーダー役です。「一剣舞」と言われます。

なるほど。仏様がモチーフなんですね!なんで「鬼」剣舞なんですか?

「鬼のように勇壮に大地を踏みしめて悪霊退散を祈る」という意味が込められているんです。だから、面も仏の化身だけれど怖い顔をしていますし、強い足踏みと刀や扇を持って舞うのが特徴です。

たしかに、とても強い足踏みで、実際に見てびっくりしました。何度も跳ねるし、体力使いそうですよね。

おはやしが始まってゆっくりスタートするのかと思いきや、皆で大きな音を出すので、初めて見られた方はびっくりされると思います。元々そうやって鬼のように邪気を払っていたので、由来を聞いてようやく納得できますよね(笑)結構激しい動きをするので、終わった後は汗だくになります。

伝統芸能と聞くとなんだか硬そうだけど、体を動かして自己表現をする「踊り」なんです。

元々鬼剣舞を始めたきっかけは何だったんですか?

生まれた時から父と母がやってたので、土日になれば稽古をするというのが当たり前でした。だから、きっかけとかは特にありません。それこそ小さい頃は、友達皆が鬼剣舞をやっているものだと思っていました(笑)やってないと知った時に衝撃をうけたくらいです。「えー!鬼剣舞やってないの?じゃあ土日何してんの?」ってかんじで(笑)

えー!そこまでですか!!

父親が「二子流東京鬼剣舞」を作った人なんです。だから、鬼剣舞は小さい頃からずっと僕の身近にありました。でも正直、小さい頃は土日になると友達同士が遊びにでかけているのがうらやましかったし、なんで僕だけこんな事やってるんだろうって思うこともありました。僕だって友達と普通に野球してゲームして遊びたかったんです!!(笑)部活があってもどうしても鬼剣舞を優先しないといけなかった時とか、それが仲間に理解されなくて悲しい思いをしたこともありました。

辞めようとは思わなかったんですか?

辞めようと思ったこともあります。基本的に自分から進んで「踊りたい!」って気持ちでやっていなかったし、踊りを作った人の息子だから、自分がやるもんなんだ!って自分に言い聞かせて続けていました。義務感みたいなものだったと思います。

それでも今まで続けてきたんですよね…?

はい。今では自分から踊りたいという気持ちで稽古に臨んでいます。そう思えるようになったきっかけは、地元の踊り手の人に褒めてもらえたことでした。「今までは小川さんの息子っていうふうに君のことを見ていたけど、今日の踊りはとても良かったね。」って言ってもらえたんです。それがとても嬉しくて、初めて一人の踊り手として認められた気がしたのを今でも覚えています。今では少しづつ一剣舞の役目をまかせてもらえるようになりました!

すごい!リーダーですね!

ありがとうございます。一剣舞を任せてもらえるようになって一段と責任感が増しました。今までは自分の事しか考えていなかったし、自分の踊りで精一杯だったのが、これからは「踊り組」のリーダーとしてチームを引っ張らなくてはいけなくなったんです。自分さえ上手くなれば良いというわけでは無くなってきて、チームとして上手くなるためにどうすれば良いか考えるようになったし、伝統芸能を伝えていくということについて深く考えるようになりました。

大きな心境の変化があったんですね。小川さんはこれから鬼剣舞をどう伝えていこうと考えているんですか?

鬼剣舞自体がそもそも有名な伝統芸能じゃないし、初めて聞く人にとっては謎が多すぎますよね。伝統芸能と聞くとどうしても硬いイメージを持つ人もたくさん居るだろうし。でも、やっていること自体は「踊り」なんです。体を動かすのが好きな人だったり、踊りを使って自分を表現したいひとが団体に所属しています。僕自身、踊りの形だけを伝えていくのは良くないと思っていて。「ここの腕の角度はこうだ」とか、色々ありますけど、楽しむ事が大前提だと思うんです。だから、その硬いイメージを取り払って、もっと身近に感じてもらえるようになるために、いろいろな場所で公演して若い人にも面白さを知ってもらう必要があると考えています。

小川 大介

舞人

幼い頃から鬼剣舞の踊り手として活動し、昨年から二子流東京鬼剣舞の「初代一剣舞」に就任。伝統芸能の魅力を伝え続けている。

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